4.実践についての考察
(1)実態調査についての考察
@日常の衣服を選ぶとき、9割以上の生徒が自 分の判断や親と相談して決めており、中学生は 自分の着用する衣服に対して高い関心がある。 自分の着用する衣服は自分で選ぶことが多い。 親が勝手に買ってきたものや格好が悪いと感じ たものは購入しても着ないと答えた生徒もい た。また,「なんでもいいから新しい服がほし い」「流行の服がほしい」など現在ほしい服が ある生徒が約5割であった。(資料参照)
A服を選ぶ条件は外観を重視し,品質等はあ まり確認していないようである。サイズ,デザ イン,値段,自分に似合うかなどが主な観点で, 材質,家庭での洗濯が可能か,着やすさ,縫製, 持っている服との組み合わせなどはあまり考え て購入していない。(資料参照)
B手入れや保管に関しては他人まかせにするこ とが多く,自己管理ができている生徒は少ない ようだ。洗濯,ボタンつけなどの仕事はほとん ど他人まかせである。アイロンかけも小学校の 授業の中での経験が多く,日常の生活の中で衣 服にアイロンをかけている生徒は少ない。
(2) 指導計画についての考察
家庭生活領域35時間の指導計画のうち,他 領域との関連が深い家庭の仕事の部分を24時 間で配当した。家庭の仕事の部分は学習内容が 多く,時間が不足しがちである。しかし,今回 の実態調査結果から,生徒の衣服に対しての関 心の高さと衣服に関する仕事に対する意識の低 さというアンバランスな現状が浮き彫りにされ た。そのことを考慮し,衣生活にかかわる仕事 に配当する時間を考えた。学習時間を確保する ことにより,日常生活に密着していながら見過 ごされがちな衣生活にかかわる仕事について, 適切な授業実践が行われるように計画した。
(3) 「学習材」を取り入れた衣生活に
かかわる仕事の授業実践
実態調査の結果から考えると「学習材」を用 いた授業によって自分の衣生活を見つめ直し, 課題を解決していこうという授業は適切であっ た。ほとんどの生徒は毎日着用している標準服 には関心が薄い。しかし,自分が日常着用する 衣服に対しては関心が高いため,適切な教師の 「支援」により,「学習材」となる課題を見つ け,解決していこうという姿勢がみられた。価 値観が多様化している現在,衣服に関するイメ ージ,考え方,経験は生徒それぞれ違っている が,「学習材」を用いた授業はそれらが生かさ れ,意見交換を図りながら体験的な活動を通し て解決の予想を立て,試行錯誤しながら課題解 決に至ることができた。また,その中で生徒が 互いの考えを認め合い,解決の仕方にもいろい ろな方法があることにも気付くことができた。
「学習材」を取り入れた授業は,教師が教えることを前提に展開された授業よりも実際の生活に根差したものとなり,印象深く生徒の中に残っていくようだった。授業の後の「よく考えよく見て服を買おう」「買った衣服は手入れをしながら大切に着るようにする」「自分でできることは自分でやろう」という生徒の感想から,自分の衣生活について真剣に考える機会となり,家庭生活の中に生かすことができたと考えられる。
X.まとめと今後の課題
「学習材」を用いた授業は生徒自らが主体的に学習を進めるうえで大変有効である。扱う題材によっては,教師側でいろいろな準備が必要な場合もあるが,これまでの題材も扱い方によっては「学習材」となりうる。「学習材」を用いた授業によって養われると考えられる思考力,判断力は基礎・基本となるものの発展的な位置にあるものである。したがって,どの場面でどのような学習材が適するのかを見極め,教科としての基礎・基本を押さえた上で,授業を構成することが大切である。また,家庭生活領域は,本教科における他領域との関連が深いため,ややもすると他領域の学習内容に踏み込んでしまう心配がある。衣生活にかかわる仕事についても被服領域との関連を考え,家庭生活領域として押えるべき内容について検討しながら研究を進めていきたい。
最後に,衣服の材料,洗濯用の洗剤など目まぐるしい勢いで新製品が次々と売り出される現状を考えると,実際の家庭生活に生かせる授業を行うためには常に新しい情報に耳を傾ける教師の姿勢も大切だと考えられる。