住 居 領 域 

 自ら課題を見つけ住環境の向上に主体的に取り組む生徒をめざして 
           〜快適な住まい方を通して〜     

                    札幌市立啓明中学校   教諭 小 林 美知子
 






 

 

T はじめに         

 住まいは日常生活を営みつつ明日へのエネルギ−が再生産される場である。また私たち人も再生産される場,即ち,子を産み,育て,家族関係を学び,社会に送り出すという大切な機能を持った場である。そして高度情報化社会・価値観の多様化等,目まぐるしく変化する現実の社会生活をおくる心のよりどころ,『生きる力』を育む場である。昔から衣食住といわれるのも「人」をつくるという意味もあって「住」が重要視されているのであろう。

 さて,21世紀までわずかとなった現在,わたしたちの生活は,高度経済成長と近代科学技術の著しい進歩に伴い,合理的で近代化された豊かな物質・情報を容易にしかも比較的安価に入手でき,物質的には本当に恵まれた生活を享受している。しかし,よく言われるように物質の豊かさが心の豊かさと比例しているのではなく,むしろ反対に自然への畏敬・恩恵への感謝・生命の無上への愛着心などは失いつつあるとさえも言われている。「使い捨ては美徳」と言われた時期もあったが,1997年12月,京都の「地球温暖化防止会議」の開催で示されたように地球の温暖化や環境破壊・汚染など,わたしたちの生活に警笛が鳴らされた。今や,私たちは地球の住人,人類の一人としての義務と責任,全地球的な視野を持つことが要求されている。しかし,高度経済成長期の真っただ中に生まれた生徒は物質的には豊かな生活を至極当然にしている。そのため,不便さを工夫して問題を克服解決する「必要は発明の母」式の昔から人として持っている能力を発揮することなく成長したきらいがある。このような社会的背景を持つ生徒は人としての営みや生活技術,文化の伝承などを学ぶ「場」の少なさを反映して,住まいを客観的に見つめることは,難しい。しかし,幸いに昨今の環境問題がマスコミを通して「生活の見直し」を提案しはじめ,生徒自身も情報として受け入れており,内容まで深まってはいないが意識は芽生えはじめている。

 そこで,本領域では,家族の一員としてよりよい住まい方を模索し,住まいの状況に自分の生活をあわせるのではなく,主体的にかかわっていく課題解決能力と,それを生活にいかす実践力の育成をめざしたい。また,この領域は生徒一人ひとりの生活基盤も住まい方も違うので基礎・基本を大切にしながら個別化・多様化などを図りつつ,個性や創造性にも対応していきたい。その中で,学び合う楽しさ,他者とのかかわり,先人の知恵なども伝えていきたい。

 

U 研究のねらい

 住居領域は学習しても住宅そのものは生徒の手で解決しにくいので取り扱いが難しいといわれる。が,将来自分が住み手という立場なども想定させ,学習に臨ませたい。自分の生活を通して自ら課題をみつけ,考え,さまざまな考えを駆使して自ら判断し,解決を図る。それを生活にいかし,また,課題を見つける。という学習を積み重ねながら主体的に住生活とかかわり,追求していく積極的な意識・態度を持たせることが大切であると考え,実態調査を基に以下を研究の重点とした。

 

 1.一人ひとりが自らの課題に意欲的に取り組  める学習材の検討・工夫

 2.生徒一人ひとりが主体的に身近な題材を通  して自分の学習課題を把握させる。その課題  解決を図るため体験をベ−スにした活動場面  や多様な考え方や発想を表現する場の設定な  ど,授業の展開の工夫

 3.学習意欲を高めるための指導・支援の工夫

 

  また,札幌市内の学校の本領域履修実態調査 を行い,履修状況や教師の意識などをまとめた い。

V 研究の内容と方法

 1.生徒の実態調査

  授業を構築するために実態調査を行った。目 的は生徒が主体的に授業に取り組むため,住ま いへの意識を把握することである。この調査を 機会に社会上の体験や生活体験の稀薄な生徒が 自分の住まいに対する思いや願いを出す。それ を学習への動機づけにすること,さらに興味・ 関心の喚起を促すことやサブテ−マの学習材と して,活用を図ることをねらった。

                (一部省略)

 

 (1) あなたは住まいについて,関心があります  か。

 (2) あなたは住まいのどんな点に関心がありま  すか。

 (3) あなたは住まいを快適にするために何か考  えたことがありますか。

 (4) あなたの家の風通しは?

 (5) 家で換気をしますか?

 (6) 閉め切った室内で気分が悪くなったこと   は?

 

 (7) 換気で,困ったことは?

 (8) あなたの家に「ダニ」は?

 

 (9) あなたの家で「カビ」の発生は?

 

 (10) 湿気で困ったことは?(具体的に)





 

・洗濯物が乾かない ・本が湿る
・布団がつぶれる  ・空気が臭い
・押し入れの結露 ・窓の水滴 ・カビ発生
 

 

 (11)ダニ・カビの発生場所は?(具体的に)







 

・布団・ベット・枕・床・絨毯・ソファ
・畳み・ぬいぐるみ・押し入れ・暖かい所
・空気中(くしゃみがでる)・地下室
・お風呂・部屋の隅・ベランダのガラスの下
・窓の縁・タンスの中と裏・棚の裏側・天井
 

 

 (12)快適な住まい方で困っていること,知り  たいことは?


・風通しがわるい
・私の部屋には小さな窓しかないので臭い
・布団が湿っていて気持ち悪い
・帰ってから部屋にはいると,ジメジメした感 じがしてイヤだ 
・押し入れの下に布団とか物が置けないで困る
・結露がひどく,窓に水が溜まってひどい
・窓がすぐ曇る
・湿度調整の方法を知りたい
 

 

<考察>

  生徒は住まいについてやや関心がある。がチ ラシなどにみる外観や家具などの素敵な家への あこがれとみえる。また,環境問題に関心のあ る生徒もいる。これはマスコミや小学校や家庭 の教育の結果だと思われる。また,現代の高気 密・高断熱住宅による室内環境問題(頭痛・湿 気・カビ・ダニ等)を経験している生徒もいる。

 

 2.指導計画の検討

  領域の特徴と生徒の実態をふまえて,指導計 画の作成をした。主体的に取り組める課題,そ

 の課題解決が図れるように体験的な活動場面や

 生徒の発想が取り入れられるように計画を作成

 した。

 

 3.学習材

  今回の研究のサブテ−マを受けて学習材とは 教師の教え込む,学ばせるというのではなく, 学びたい,知りたい,やってみたいという生徒 自らが必要価値を感じるものである。従って, 生徒の興味・関心があり,あるいはそれを持た せるような教師側の工夫が必要になってくる。 そこで,生徒一人ひとりが必要としている関心 のある題材を検討するために生徒の実態調査を 最大限生かすことにした。それをベ−スに生徒 が自分なりの課題を見つけ,課題解決ができる ように個別に対応する,無理に課題を共有化せ ず,多様な課題に対して,できるだけ情報とし ての指導・支援に努め,多様な解決方法を模索 させることを考えた。

 

 4.ワ−クシ−ト

  主体的に自分の課題が意識できることと単に知識のみではなく,生徒が身近な家庭などで実践できるようにワ−クシ−トを工夫作成した。

 

W 実践

 1.指導計画(20時間)















 

1.私たちの生活と住まい    (2)
  実態調査に基づくテ−マの選択
2.住まいのはたらきとくふう  (1)
3.わたしたちの住まいと住まい方(4)
  (*間取り・家具 *インテリア)
4.生活様式と住まいの計画   (4)
  (*室内の設備・LDK*安全な家)
5.快適な住まい方       (4)
  室内気候の調節と換気  本時 1/4
  (*騒音 *掃除の仕方と整理)
6.これからの住生活      (4)
  (*省エネ *環境を考える)
7.学習をいかそう       (1)
 

  *は調べ学習の発表である。実態調査の「住  まいのどんな点に関心がありますか」の項目  を使って生徒が自由にテ−マを選び,調べ学  習を取り入れた例である。

 

 2.授業実践例

  (1) 題材名

   快適な住まい方(室内気候の調節と換気) 

  (2) 指導の実際例

   ・湿気と結露,カビの関係を科学的に理解    し,具体的な解決方法への追求の評価は    プリントや授業中の観察で行う

   ・換気と通風の仕方と必要性を知り,衛生    的な住まい方への改善の評価はプリント    や授業の取り組み姿勢で行う